「飛距離を伸ばしたいから、ベンチプレスや懸垂でとにかく筋力をつけよう」
もしあなたがそう考えて日々トレーニングに励んでいるなら、少しだけ立ち止まって聞いてください。大胸筋や広背筋といった大きな筋肉を鍛えることはもちろん大切ですが、それだけでは飛距離アップにつながらないばかりか、最悪の場合、肩を壊してしまうリスクさえあります。
理学療法士として多くのゴルファーの体を見てきた私だからこそ断言できる、飛距離アップに不可欠な「ある筋肉」の重要性について解説します。
科学的根拠:研究データの解説
エビデンス
この研究データが示している事実は非常にシンプルですが、多くのゴルファーが見落としている点です。
広背筋(背中の大きな筋肉)や大胸筋(胸の筋肉)は、確かにパワーを生み出すエンジンのような存在です。しかし、そのエンジンの力をロスなくクラブに伝え、かつ肩関節という不安定な構造を支えているのが「ローテーターカフ(インナーマッスル)」なのです。
人間の脳は非常に賢くできています。関節を安定させるローテーターカフの筋力が不足していると、脳は「これ以上強い力を出すと関節が壊れる」と判断し、無意識のうちにアクセルを緩めてしまいます。つまり、いくらアウターマッスルを鍛え上げても、インナーマッスルが弱ければ、そのパワーは封印されてしまうのです。
飛距離の壁を突破する:インナーマッスルの強化
では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。ローテーターカフは、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つの筋肉の総称で、非常に繊細な筋肉です。高重量のダンベルを振り回すようなトレーニングでは、アウターマッスルばかりが働いてしまい、肝心のローテーターカフは鍛えられません。
地味に見えるかもしれませんが、低負荷で正確な軌道を描くトレーニングこそが、飛距離アップへの最短ルートです。
トレーニングチューブ(強度別セット)
怪我の予防とパフォーマンス維持:肩甲骨のコンディショニング
記事内でも触れられていますが、ローテーターカフが機能しない状態でアウターマッスルばかり強化すると、肩関節の障害(怪我)に直結します。痛めてしまってはゴルフどころではありません。
ローテーターカフが正しく働くためには、その土台となる「肩甲骨」が正しい位置にあり、胸郭が柔軟に動くことが前提条件となります。日頃のデスクワークなどで猫背になり、肩が内に入っている状態では、どんなにトレーニングをしても効果は半減してしまいます。
ストレッチポール
まとめ
今回は、飛距離アップにおけるローテーターカフの重要性を、科学的根拠に基づいて解説しました。
「アウターマッスル(エンジン)」と「インナーマッスル(スタビライザー)」は、車の両輪のような関係です。どちらか一方だけでは、最高のパフォーマンスは発揮できません。今まで筋トレをしているのに飛距離が伸び悩んでいた方は、ぜひ今日からインナーマッスルの強化を取り入れてみてください。あなたのポテンシャルは、まだ眠っているだけかもしれません。