【ゴルフトレーニングの科学的根拠No.58】ゴルフスイングにおける筋活動のレビュー



エビデンス




ダウンスイング初期において右の脊柱起立筋、両側の大胸筋、肩甲下筋、広背筋が高い活動を示し、前腕屈筋群は随意的な収縮よりも高い活動。』




研究グループ




Marta et al.2012




ゴルフスイング中の筋活動




 ゴルフスイング中にどの筋肉がどのように反応するのか調査した研究報告を集めてレビューした報告です。2012年の報告ですが、まだまだゴルフスイングの筋活動の調査は不足している印象です。もっと詳しく分かっていれば、より具体的なトレーニングができるのに少し残念です。特に脚まわりの研究報告は少ないようです。下半身の運動は重要なので細かな筋肉まで情報が欲しいところです。




筋活動について




 さて、今回の研究では主に腰痛、肩痛、ゴルフ肘に関する筋活動を調べた文献を調査しています。筋活動というのは筋肉が収縮する際に生じる電気信号を読み取ったものです。皮膚にセンサーを貼って計測する方法とワイヤーを直接筋肉に刺入する方法があります。皮膚センサーではクロストークといって、計測したい筋肉以外の筋肉の活動を拾ってしまう問題があるので、ワイヤーで計測した方が正確です。特にインナーマッスルなど、深層部にある筋肉ではワイヤーが用いられますが、今回は主としてアウターマッスルのお話なのであまり関係ないかもしれません。




ダウンスイング初期の右脊柱起立筋




 今回の研究ではダウンスイング初期において右の脊柱起立筋、両側の大胸筋、肩甲下筋、広背筋、前腕屈筋群が高い活動を示したということでした。脊柱起立筋というのは背骨に沿って縦に走る筋肉です。その名の通り、脊柱(背骨)を起こす筋肉で、体幹を前傾したり背筋を伸ばしたりすると強く働きます。実はこの筋肉が筋・筋膜性腰痛の原因になることも多々みられます。特に反り腰の方は要注意の筋肉です。




腕を振り下ろす大胸筋と広背筋




 大胸筋はマッチョな人がピクピクと胸を動かしていますが、その筋肉です。脇を締め、肩関節を内旋(内側へ回旋)させます。広背筋は腕を振り下ろす際に強く働く筋肉ですが、肩関節の内旋や体幹の回旋にも貢献しています。両者とも飛距離を出すには必須の筋肉といえます。一方で、インナーマッスルを鍛えずにこれらばかりを鍛えていると、肩関節の不安定性を招くでしょう。ゴルフスイングしか運動しないという方はこれらのストレッチとインナーマッスル強化だけはやっておく必要があります。




肩関節を安定させる肩甲下筋




 肩甲下筋は肩関節のインナーマッスルの一つです。他の棘上筋、棘下筋、小円筋と一緒にローテーターカフというインナーマッスル群を形成していますが、これらが肩関節を外旋(外側へ回旋)させるのに対し、肩甲下筋は内旋させる筋肉であるということです。つまり、肩関節を内旋させる力が重要な要素の一つといえます。




手首の運動やグリップを担う前腕屈筋群




 最後に前腕屈筋群ですが、手首を招く運動や指を握る運動に必要な筋肉です。随意的な収縮よりも強く働くということですが、これは握力測定でグッと握るよりもゴルフスイング中の方が強い力が出るということです。衝撃に耐えるのに必要な瞬間的に発揮する力は、脳内でコントロールして発揮する力よりも強くなります。強い力がでるということは関節や筋肉の付着部に負担がかかるということです。特に肘の内側の痛み(ゴルフ肘)の原因になり得ます。しっかりストレッチをして、予防、ケアをする必要があります。




ケアと筋力強化




 このように、ゴルフスイングに必要な筋活動が分かるとどこを一層鍛えれば良いのか、どこをケアすれば良いのかが分かります。上半身だけでは不十分ですので、今後も追って体幹や下半身の報告も紹介していきます。